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九州の地誌その1

あじ、さんま、さば、ぶり、かれい、たい、いか

7種類の魚を挙げました。2つに分類してください。

むむっ、回転寿しのネタか?いえいえ、地理の学習的にですよ、念のため。

では、答えです。

あじ、さば、ぶり、たいのグループと、さんま、かれい、いかのグループです。

最初の4種類の魚は長崎県の漁獲量が日本一です。後のグループは北海道が漁獲量日本一です。

あじ、さば、ぶり、たい、のグループではぶりの除いて北海道はトップ10にランクインすらしていません。ぶりでも7位です。単純に分ければ、冷たい水を好む魚か、暖かい水を好む魚かという違いになります。

 

九州の地誌は、まず長崎県から学習しましょう。

長崎県と言ったら、まず「漁業県」と言ってよいでしょう。なぜ、これほどまでに漁業が盛んなのでしょうか?と地図をみれば、答えは超簡単ですね。

海岸線が複雑なのです。このような海岸をリアス海岸といいますよね。

もともと山地だったところが沈んで、その谷筋に海水が流れ込んだというわけです。と、一口に言いますが、そもそも「沈む」って地面が沈むのか?ということ自体あり得るのか?と疑問になってします。だって、私たちが普段生活しているこの地面沈んでしまい、やがて海の中に消えてしまうというわけでしょう、考えてみれば恐ろしい話です。

実際、この地域は氷河時代に氷に削られて深い谷が刻まれ、そこに氷河時代が終わって上昇した海水が流れこんだ、という解釈ができるようです。

どちらにしても、山が海岸ギリギリまで迫ってきているわけですね。

 

こうした海岸線が複雑で湾の発達しているところでは、漁業が発達します。

川の水が河口に達すると、そこで淡水と海水が混ざることになります。このような場所を汽水域と言いますが、湾が奥深くまで発達しているリアス海岸は、汽水域が広くなっているわけです。魚によっては、幼少期にこの汽水域で生活するものをありますから、漁業も盛んになります。

リアス海岸は深い谷筋に水が入り込んでいるので、湾の水深が深くなっています。漁船が入りやすいということもありますが、外海から離れているので波が比較的静かで、魚が生活しやすくなります。

魚も弱肉強食の世界であり、小魚は大きな魚から逃げなければ命がありません。岩場が発達するということは、こうした小魚の隠れ家になるということですから、相対的に魚がたくさんいるということになります。

などなど、様々な理由でリアス海岸は漁業が発達しやすい条件が揃ってくるわけです。また、こうした地域では、島も多くなります。島は平地が少ない場合が多く、どうしても漁業で生活を立てることになります。

 

ちなみにリアスとは、スペインの北西にリアスバハス海岸というところがあって、そこの海岸線がとても複雑に入り組んでいるのですね、そこから取った名前でリアス海岸と言います。日本では岩手県宮城県三陸海岸が有名ですが、九州では長崎県でリアス海岸が発達しています。

 

長崎県は、こうした背景から漁業が発達し「漁業県」と呼ばれるようになったのですが、もちろん、それだけではありません。もともと山地が沈んでできた場所ということから、平野があまり発達していません。

長崎県の平野を挙げなさい、と問われても答えようがありません。数少ない海岸近くの平地には田んぼを作り、人々が密集して生活します。丘では畑をつくり、山の斜面を利用して果樹栽培をします。こうして県の特産品になったのが「びわ」ということになります。また、みかんの生産も全国6位ですから少なくありません。山の斜面を利用しているということですね。

長崎と言えば原爆投下が広島と並んであげられます。なぜ狙われたのか?造船所があるからと言われていますが、大型の船が製造できるということは水深の深い湾が必要不可欠です。佐世保には米軍基地があり、大型の艦船が湾の奥まで入ってきます。やはり水深の深い港がある、ということです。

長崎の歴史で特筆されるのは、江戸時代の鎖国中であっても、長崎だけは外国に開かれた街として独自に発達してきました。外国からの船が入港しやすい地形が背景として考えられます。また、防衛的に考えても、山ばかりで平野が発達していないということは、敵が一気に攻め込みにくい、ということですから、唯一外国に門戸を開くのには好都合だったと考えることができるでしょう。

 

長崎県の特産品、歴史、工業なども、実は自然環境の上に深いつながりがあることがわかると思います。バラバラの知識として丸暗記しないで、リアス海岸をキーワードに、それぞれを有機的につなぎ合わせて地理を学びましょう。

 

ここで一句

 

回転寿司 選んだ魚は 長崎産

 

ではでは