アメリカ合衆国の地誌その３
単刀直入に聞きます。
アメリカの五大湖は、どうやって出来たのでしょうか？
おっと、大学受験をめざす受験生には簡単すぎたようですね。答えは、氷河が削ってできた、ということです。つまり、氷河湖です。
では、次の質問です。
氷河時代とは、いつ頃のことですか？今から何年前、というかたちで答えてください。
１０億年！と答えた人、全然見当違いですよ。
１００億年！と答えた人、おいおい！地球の歴史が４６億年なんだぞ？！
１００万年と答えた人、てきとうに答えていることがバレバレです。
では、正解です。８万年前から始まり１万年前に終わった。というところです。
ちなみにこれは富士山の火山活動とかぶっています。
まだ、ピンと来ませんよね。例えば、地球４６億年の歴史を文庫本１冊と仮定すると、氷河時代というのは、後ろから３、４ページ目という程度です。ずいぶん最近の話なんだなあ、と感じてほしいところです。
えっ？じゃあ、富士山ができたのはそんなに最近の話？そうなんですよ。
さて、氷河時代とは地理学では「氷期」と呼びます。この氷期の気温はどのくらいだったでしょうか？子供の頃の絵本で、氷の大地に恐竜がいる姿を見たことある人いませんか？あれ、ウソです。
地球全体の気温は５〜７度下がってはいますが、地球全体が氷の球になったわけではありません。東京だって、札幌くらいでしたから。
地球くんの歴史からすれば、氷期はほんのついさっき、の出来事だったわけですから、現代を生きる私たちにも、実に大きな影響を与えているのです。
五大湖のもう少し北に、氷河が発達しました。いわゆる氷床です。これが、標高の低い南側にズリズリと地面を削りながら移動してきました。この氷とは、雪が毎年降り積もり、強い圧力で氷となったものですから、かなりの重みがあります。地表面も一緒に削ってしまうわけです。こうして出来たのは五大湖なので、テスト対策的には「氷河湖」という用語は必須です。
氷期が終わり、気温が上昇すると氷が解けて海に戻っていきますが、氷で削られたくぼ地に水が溜まったてできたものが五大湖なのです。
さあ、ここで発想の転換をしましょう。氷が地面を削ると、どんなことが起こるのでしょうか？
冬の雑木林では落葉広葉樹が葉を落としますから、足下は落ち葉で埋まってしまいそうですね。この落ち葉の下は真冬でも暖かくて、微生物がゆっくりと葉を分解していきます。こうすると、肥料となって、再び栄養分が土に戻るわけです。
ところが、この栄養分をたっぷりと含んだ腐葉土の部分を氷が削ってしまったわけです。残された土地は、やせてしまっているわけです。五大湖周辺は、氷河で削られているわけなので、どうしても土地がやせています。農業として小麦を栽培するには、適地とは言えません。
そこで、本題の農業です。五大湖周辺で発達しているの農業形態は何でしょうか？
酪農ですね。
乳牛を育てて生乳をとるのです。氷河でやられてしまった土地を、畑として使うには土地の状態が悪く、放牧地として乳牛を飼育しているのです。
地理では世界各地の農業形態について学びます。アメリカ合衆国でも同じです。どこが酪農、どこがコーンベルト、どこが冬小麦、、、という具合です。
まさか、これを丸暗記してしてないでしょうねえ？そんなの絶対に暗記はダメです。永久に地理で得点することはできませんよ。
農業は、農家の方々が、天候を気にしながら、お客さんに新鮮なものを食べてほしいという気持ちを持っていることを忘れてはなりません。でも儲からないと意味がないわけで、それらをあれこれと考えた上で、農業が経済活動として成り立っているのです。そのための条件がいろいろあるのです。
まず、「気候」次に「地形」。そして、「輸送コスト」です。
五大湖周辺は、合衆国が成立当初から中心的な地域ですから人口も多く、大きな都市が分布しています。ということは、新鮮な牛乳を届けることができるというわけです。腐らせてしまっては意味がありませんからね。
酪農の発達する条件として、都市という消費地があるかどうかがカギになります。
ただ、一つ加えておくと、いくら都市が近いからといっても、牛乳を常温の中、馬車で運ぶのは、せいぜい４、５キロといった所まででしょう。１８８０年にフランスのパストゥールが低温殺菌法を開発し、この結果、殺菌された牛乳が都市でも飲めるようになったという背景があります。酪農地帯の都市周辺部への拡大は、この殺菌法の開発以降ということになります。なお、低温殺菌牛乳は、スーパーマーケットで牛乳を見ていると、時々ありますね。摂氏６０度で３０秒と表示されていますが、これはパストゥールの開発した当時と同じ温度と時間です。
ここで一句
（カーネーションの園芸作物はその４にて）
ではでは
