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アメリカ合衆国の地誌その5

アメリカ合衆国の南部には、広大な綿花地帯が広がっています。

そこで、まず問題です。

「綿花の収穫時に、最も適さない気候は何か答えなさい。」

答え、、、、の前に、質問の意味はわかるでしょうか?

地理の学習で大切なことは、その問題の意味を理解することですが、同時にその情景が具体的にイメージできるかどうか、というものです。

もちろん、ただ点を取りたい!丸暗記でもいいから、とにかくテストを乗り切りたい!というのであれば、情景など関係ないかもしれません。

でも、せっかく同じ時間かけて勉強するのだったら、もうすこし意味を理解して答えを導くことの方が、結局は近道になるというものです。

学問に王道なし!ならば、地理に近道あり!です。

 

さて、綿花収穫時の状況が目に浮かぶでしょうか?

そもそも綿花畑などは、日常的に目にすることはほとんどないでしょう。畑で大根作ってて、それを引っこ抜いて収穫!というのはイメージできるかもしれませんが、綿花となるとなじみが薄いでしょう。

クリスマスツリーをデコレーションする場面を思い出してください。プレゼントを枝にぶら下げて、点滅電球を忍ばせ、てっぺんには星を取り付ける。そして、最後に雪を表現するために、脱脂綿を枝にくっつけていきますね。

この枝に脱脂綿がくっついた状態、これが綿花の収穫直前のようすです。だから、これを手で1つ1つ収穫していくというのは、とても大変な作業なのだとわかると思います。

 

さあ、最初の問題に戻りましょう。

綿花収穫時に、最も適さない気候は何ですか?

「雨」うーん、もちろんそれもありますね。商品としては使い物になりませんね。

「霧」おしい!

「雷」ドカーン!バリバリバリ〜

「霜」これです。明け方に霜が降りることが、綿花の商品価値を台無しにしてしまうのです。

参考書には、綿花栽培の条件として、「年間無霜期間200日以上」とあります。ここは丸暗記の前に、その意味を理解しましょう!

年間無霜期間とは、霜が降りない期間のことですから、暖かい時期のことです。綿花の栽培期間中は、霜が降りないこと!というのが単純な条件となりるわけです。難しくありませんね。なのに、特に200日以上と断っているということは、綿花がいかに霜に弱いのか、ということを意味しているわけです。

さらに、生育期に温暖湿潤な気候です。できれば高温多雨、つまり熱帯に近い気候です。そして、収穫時期には乾燥すること。ここが無霜期間ということですね。

アメリカの南部はこの気候条件をクリアしており、大平原を生かして、一大綿花栽培の中心地となっているのです。ただし、収穫に大変な手間がかかると言いましたが、それをアフリカからの黒人奴隷の労働力で補ったわけです。地図帳に載っている、アメリカの民族、人種の分布地図を見ると、黒人の分布と綿花栽培の中心地が一致しているはずです。

このアメリカ南部の気候をまとめてみましょう。

年平均気温15〜20度、1月の降水量は100ミリ。7月は28度で200ミリ。

これをどう解釈するか、ということです。回りくどく言ってしまいましたが、要するにアメリカ南部はCfaで日本の気候と同じなのですね。特に関東地方の冬は雨量がぐっと減って乾燥しますから、綿花栽培には好適地となるわけです。

江戸時代までは日本でも綿花栽培を大々的にやっていましたが、開国後に日本産の生糸、つまり絹が外国で飛ぶように売れるようになってから、綿畑が桑畑に姿を変えていったのです。そこに、外国製の紡績機を導入したのが、富岡の製糸工場というわけです。綿畑、桑畑の広がる地域だからこそ、大きな工場を建てるための用地は用意に準備できたことでしょう。

工場用地について考えたところで、アメリカ南部の綿花栽培地域に戻りましょう。この地域の綿花栽培は今でも盛んで、アメリカ合衆国の綿花生産は、中国、インドに次いで3位、シェアは14%です。輸出は1位でシェアは34%です。(2012)

アメリカ南部は、黒人の労働力が得やすいこと、広い土地が得やすいこと、気候が温暖なこと、という様々な理由から工業が発展してきています。これをサンベルトと言います。アメリカ合衆国の、これからの中心になっていくところですね。

 

ここで一句

 

サンベルト 作業で着る服 ここの綿 

 

ではでは