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九州の地誌7

鹿児島市内から桜島を見た時に、噴煙を上げているのは、右側でしょうか?左側でしょうか?

そんなものは、地元の人間じゃないとわかるわけないじゃないか!

その通り、市内の人でなければわからないでしょう。

私が、この問題に出会ったのは、高校生ぐらいの時だったと思いますが、テレビの投稿問題でした。鹿児島の女子高生3人組による出題、ということでした。

そもそも、桜島がどんな姿で見えるかどうかすらも知らなかった私は、実際に西鹿児島駅を降り立つまで、まったく想像したこともありませんでした。

では、次の問題です。

鹿児島市内では燃えるゴミ、燃えないゴミの収集の他に、火山灰の収集が行われますが、市指定の袋を使うことになっています。さて、その指定のゴミ袋の色を答えてください。

おいおい!なおさらわからないだろうよ!

答えは、黄色です。また、前問の答えは右側=南側です。

ここで受験ネタとして覚えておいてほしいのは、桜島の高さです。だいたい1000mちょっとです。こういう変化がほとんどない数字は、地理の問題を解く上でいろいろ活用できますので、ぜひ丸暗記で覚えてしまいましょう。陸別平均標高一覧表で大陸を推測して問題を解く、というものも、実際に入試で出ていますから。

さて、火山からの火砕流が堆積したものがシラス台地です。白っぽいから白い砂でシラスと鹿児島弁で言います。鹿児島では、このシラスそのものよりも、海沿いの平地が少ないことから、土地の値段が高くなる傾向があるようです。また、必然的に傾斜地が住宅開発されるので、台風時の風の当たりも強くなります。

シラスは台地上に積もっており、水持ちが悪く、栄養分も少ないことから、鹿児島の農業に影響を及ぼしてきました。具体的には水田が作りにくい、ということがあります。数字で見てみると、鹿児島県の耕地面積に対する水田の割合は、九州では最も少なくて32%(2013年)です。漁業県の長崎県で46%、畜産県の宮崎県で54%です。佐賀県は81%に達しています。しかし、耕地面積そのものでは、九州で最も面積が大きいのです。つまり、畑としての利用率が高いのですが、しかし野菜や果実栽培ではないのです。工芸作物が圧倒的多数です。

工芸作物とは、工業原料に利用するために栽培される作物のことです。繊維のための綿花、油脂のためのオリーブ、糖料のためのサトウキビ、染料のための藍、嗜好品の茶、タバコなどです。鹿児島県の工芸作物は「茶」がほとんどを占めており、全国生産の30%を占めます。

ここで、「茶」が出ましたので、第1の生産量を誇る静岡県を見てみると、全国シェアは38%、耕地にしめる水田の割合は33%で、実は鹿児島県とほとんど同じ割合なのですね。

似たような地形と気候条件は、似たような栽培作物、生産割合になるという典型的な例です。恐るべし自然環境です。

ここで、自然環境を活かしたエネルギーについて見てみましょう。

風量発電です。発電量第1は青森県で2位が北海道、3位に鹿児島が続きます。(2013)

では、ここで問題です。九州の風力発電は1位が鹿児島県ですが、2位はどこでしょか?

風の抜け道を考えると、わかりますね。こういうのがひらめくかどうかは日頃から地図を眺めているかどうかが分かれ道ですよ!

第2位は長崎県です。

そもそも、なぜ鹿児島で風力発電なのか?長崎と比べてみましょう。地図を眺めているとヒントが隠されています。風力発電で大切なのは風向きですね。冬は北西の季節風、夏は南東の季節風と風向きが変わります。長崎県は風向きの方向に土地が伸びているのがわかりますね。その延長上には熊本県があります。つまり冬の季節風を受ける平戸などが風が強いのですが、その他は風の抜け道が出来ていない、さらに夏の季節風も強く受けない、という地形的な特徴があるわけです。

いや、もちろん無風状態なわけではないのですが、全体論としてはの話です。

実際、長崎県風力発電は平戸を中心に設置されていますし、隣の佐賀県は、まさか有明海側に設置するわけもなく、玄海唐津に設置されているのは明らかな特徴です。

ところが、鹿児島県を見ると、北西、南東どちらにも遮るものがなく、風を受けやすくなります。鹿児島湾もありますから、半島のどちら側でも風を受けやすくなります。さらに、南が全部開けていますから、台風などの接近時にも風を受けることになります。

もちろん、台風など風速が24m/秒を越えたらば、風車が壊れてしまうので、回転を自動的に停止させるそうですが、、、、

鹿児島県風力発電が九州で第1位である背景には、どうやら自然環境が大きく関係していると見てよいでしょう。

 

さて、受験関係で鹿児島県で特筆すべきは笠野原(かさのはら、かさのばると読むこともあり)です。ここは桜島を中心に巨大なカルデラが出来た時の火砕流により堆積した台地です。土地ややせ、水持ちも悪く、ほとんど荒れ果てた使えない土地でした。

江戸時代から改良を重ねて、ようやく昭和30年移行に畜産のための農場として使えるようになったところなのです。鹿児島県の農業生産額は、肉用牛、豚、鶏のすべての項目で九州一位どころか日本全国でも第一位です。

 

ここで一句

 

親子丼 牛しゃぶ豚しゃぶ 薩摩味

 

ではでは